平原ワカ マイ・ブロークン・マリコ

どんなに心から心配してみせたって                          そんなもんじゃどうにもならない所にあのコはいたんだよね

痛苦しい話なのに大好きで、読むたび泣いてしまう。

自死した親友・マリコの遺骨を虐待加害者の父親から強奪したシイノの短い逃避行譚。

こんな重苦しい話の何がそんなに好きなのかって、シイノの剝き出しの駆け引き無しに差し出す愛情かな。ただひたすらに、彼女は失われた親友を恋い慕う。自分全部を懸けるほどの熱量で。

こうしてる間にも どんどんあのコの記憶が薄れてくんだよ               きれいなあのコしか思い出せなくなる・・・

注ぐ先の無くなった愛情は、盥を返したように溢れ出して。

ただ悲しく理性的に思うのは、この熱量は伝える対象が消失したことで実現出来ているものでもあるだろうな、ということ。

対象が人として存在していたら、距離感や遠慮、思いやりや気遣いや立場・・・色んなものに縛られて思うようには踏み出せない。

よしんば踏み出したとしても、強すぎる愛情だけでお互いの自立の無い関係は双方を傷つけ苦しめるにいたる未来を予想させる。

好きで救いたくて堪らないのに、手が届かない。

そうしている間に彼女は指をすり抜けるように、消えて。

残されることは悲しい。

しかし、シイノは日常に戻る。

どんなに愛しても引きずられないシイノのタフさ。

タフに日常に戻り、よすがに彼女を静かに偲ぶ。

マリコがシイノを大好きだった気持ちがよく分かる。

2022年実写映画化もされることだし、おススメです。

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